- 2017年07月14日
- 安全・清潔 滅菌の話
医療業界(特に歯科)の器具の使いまわしや滅菌・消毒については、定期的にメディアで話題となるように思います。
確かに患者様からは見えないところ、気になられますよね。
今回のコラムでは、当院ではどのように使用後の器具を取り扱っているかをご紹介していきます。
■滅菌と消毒の違いについて
消毒・殺菌とは、人体に有害な微生物、物質を除去したり無害化することです。これに対し、滅菌とは人体に有害か無害かに関わらず、すべての微生物を死滅させることです。
■使用後の器具の取り扱い
当院では患者様に触れる器具・道具の使用後は、大きくわけて「1回使用すると捨てるもの」と「使用ごとに滅菌するもの」に分かれます。
<1回使用すると捨てるもの>
・グローブ(ご兄弟でも分けて付け替えます)
・デンタル デジタルフィルムカバー(咬んで撮影する際、フィルムにかけるカバー)
・Tバンド(削った歯にレジンを充填する時に使う型枠のようなもの)、ラバーダム(ゴムのマスク、ウェッジ(Tバンドを固定するもの)
・チェアサイドのテーブルカバー(器具を乗せるテーブルに敷く用紙)
・歯科矯正において口の内外に装着する装置(ブラケット、ワイヤー、ゴム類、ラピッドエキスパンジョン、クワッドヘリックス、パラタルバー、プレート類)
<使用ごとに滅菌するもの>
・ハンドピース(バーやポイントを回転させ歯を削る精密機器)
・バー、ポイント(ハンドピースにつける刃)
・ミラー、ピンセット、エキスカベーターなど(お口に入る基本的な器具セット)
・クランプ、フォーセップス、ラバーダムフレーム、開口器など(処置時にお口に使用する補助器具)
・浸麻筒(麻酔をする際の注射器本体 針は薬液のカートリッジに付属しているため使い捨て)
・抜歯鉗子(歯を抜く道具)
・リーマー(根管治療用器具)
・プライヤー(エンドカッター、タイニングプライヤー、ピンカッター、ミニプッシャー、ユーティリティプライヤー、バードピークプライヤー、モスキート鉗子など、主に矯正に使用する道具)
……など
「使用ごとに滅菌」している器具は、使い捨て以外の器具すべてであるため、とてもたくさんあります。こんなにたくさんの器具を滅菌しているんですね!
■滅菌の方法
滅菌の方法は器具によって2パターンです。水分や熱に弱い器具はガスを使用した滅菌、そうでないものは高圧水蒸気による滅菌を行っています。
また、この滅菌機器にかける前には、汚れをしっかりと落とすという作業も行っています。
例えばの話ですが、泥で汚れたタオルがあるとして、それを上記のような滅菌機器にかけたとします。微生物は全ていなくなっていますが……それで顔を拭きたいと思うでしょうか?
それと同じで、いくら滅菌をしていてもやはり汚れが落ちていなければ気持ちよく患者様に使用できません。
そのため水に弱い器具は無水エタノールという消毒液で汚れをふき取った後、また水に強い機器は、滅菌の前に汚れを落ちやすくする薬液に漬け、超音波機器で汚れを浮かせた後、ブラシを使って手で汚れを落とし、その上で滅菌にかけることになっています。
患者様のお口に触れるもの、全てにおいて安全で清潔であることは「とても当たり前」のこととして、これまで敢えてご説明をすることではないと思っていました。
しかし、最近のメディアでの発表や患者様のお気持ちを考えたときに、「滅菌されているかどうか」は患者様から判断しやすいものではなく、「ちゃんとやってくれてるの?」と思われるのは当然のことと思います。
そこで今回は敢えて、この「当たり前」であるべき滅菌についてたくさんご説明を致しました。
安心して受診頂ければ幸いです。